お久しぶりです!
フィンランドから日本に帰国して気がついたらあっという間に3ヶ月が経っていました。
終わってみれば、2012年8月13日から2013年8月11日まできっかり1年間。毎日欠かさずなんとか書き続けたブログ。(リンクはこちら。読んでくれていたみなさんありがとう。一定のアクセス数があったから続けられたようなものでした。)書き続けたは良いものの、最後にまとめの文章を書かないまま月日は流れ・・・このままではいかん!ということで、実はいまワークショップで台湾にいるんだけど、ちょっと落ち着いて文章を書く時間が取れたので、こうして書いてみているわけです。自分への備忘録も込めているので相変わらずの乱文で長くなるけど、よければお付き合い下さい。
(台湾にて。季節は秋の入り口。)
さて、上記にある「あっという間に」というのは実は嘘で、あのフィンランドで過ごした夏がもうすっかり大昔の、遥か遠い幻の出来事だったような気すらします。帰国前最後の1ヶ月間は、留学生活を名残惜しくおもう気持ちと同じくらい、日本に帰ったあとのことを楽しみにおもう気持ちがありました。1年間の留学生活に満足して、ああ、あとは日本に帰ってこのエネルギーを活かす場所をはやく見つけくちゃと思っていました。だけどいざ帰国して、1ヶ月、2ヶ月とこうして月日が流れると、当たり前だけどあの日々がもう恋しくて恋しくて(笑)やっぱりこの1年間は、私の中で宝物のような1年間でした。
(帰国直前。ルームメイトに縫ってもらったスカートをはいてご機嫌のわたし。)
そんな宝物のような1年間、フィンランドで気づき、学び、持ち帰って来られたものって一体なんだったんだろう。
留学生活での気づきの話をはじめるにあたって、これはもう至極使い古された表現だけれど「世界は広くて、狭い」。この言葉を出発点としたいと思います。
私は無知な上に知識欲が薄いところがあって、知るのが億劫に思うとか、知ることが怖いなって感じてしまうことが結構多いんです。好奇心はあるのだけど、探究心が無い。飽きっぽくて何事も広く浅くになりがちなのはこのせいかもしれませんね。「人と違うことしたい」という欲は子どもの頃から強いくせに、周りを知ろうとしないなんて、へそ曲がりもいいところですが(笑)、だからこそ知るのを恐れている節があるのかもしれません。
話がそれましたがそんな私が海外で生活をしてみると、否応なく毎日が未知との遭遇で当然ながら「世界は広い」と思い知る一方、「でも意外と狭いかも」と感じることが多くありました。知らず嫌いの私は「外国にはまだまだ知らないスゴい世界がたくさんあるし、考え方も何もかも180度ちがう人達が生きているに違いない。」とビビっていましたが、外の世界は思っていたよりずっと親しみやすかった。みんな同じような問題意識を抱えていて、学生のデザイン提案は何となく同じ感じだし(もちろんレベルに差はあれど、180度ってことは無いのだ。)、どこの国でも郊外の大型スーパーには何とも言えないダサさが漂ってる。そういう事のひとつひとつに安心したし、妙に納得できたのでした。
もう少し具体的な話をすると、わたしがここ数年ずっと興味を持っている、地域活動のデザインや参加型デザイン、「みんなで何かしよう!」に価値を見いだすような考え方って、世界中でもう共通認識みたいに浸透してるのだということを知れたのは大きな収穫だと思っています。学部時代から様々な地域と関わるチャンスに恵まれて、単発ものから長期のものまでいろいろと自分なりに取り組んできたけれど、ここでもやっぱりどこかで「他と違うことしたい精神」が先行してしまうことが多々ありました。だけどちょっと外の世界に目をむけてみれば、世界中の人達が同時多発的に、それはもうたくさんの取り組みを実行していることにすぐ気づきます。私ごときが思いついたアイデアなんて、大抵似たようなことが既にどこかで行われている。留学先で受けた授業の節々からそれを肌で感じることが出来たとき、なんだかふーーっと肩の力が抜けたんですよね。なーーんだ、別に他の人が同じことやっててもいいじゃーーん。って自然と思えた瞬間があった。世界のどこかで誰かが同じこと考えて取り組んでるのって、「悔しい」とか「やられた!」っていう感覚よりも、「頼もしいなあ」「よかった、そう思ってるのって私だけじゃなかったんだ」っていう安心感の方がずっと強かったんです。そう思えたら世の中が、「自分よりスゴくてヤバいエイリアンがいっぱい」の場所から「同じことにチャレンジしている仲間がいっぱい」の場所に思えてきて、そしたらやっと素直に、探究心を持って「世界は広い」と言えるようになったかなって。最近は本を読むのがちょっと楽しい。
「世界は広い」、世の中はほんとうに、知らないことで溢れています。この目で見てみたいと思うような景色がまだまだたくさんあって、それはとても幸せなことだなあと今は思います。
(4月のフィンランド北部Posioにて。)
もうひとつのキーワードはタイトルにも書いた「寄ったり引いたりしてみるということ」。
漠然とした「日本とそれ以外」の世界から、「日本とフィンランド」を始めとするひとつひとつの国で構成された世界として認識できるようになったこと。これはやっぱり留学前の私には無かったものでした。この感覚は私に、日常のささいなことや、誰かの考え方、自分のアイデア、出来事、いろいろな物事を、寄ったり引いたりしてみることを教えてくれたように思います。
この話の流れの中で紹介したい映像作品がひとつあります。
Powers of Ten(youtube動画にジャンプします。)
ここでいう”Powers”は「べき乗」の意味なのだそうで、その名の通り1メートル×1メートルの正方形から10メートル、100メートルとどんどんカメラが引いくという映像。この作品とは、今までの人生で3回、全く別の場所で別の人から紹介されるという不思議なご縁があります。初めて観たのは中学3年生の頃、地学が専門の担任の先生が授業で紹介してくれたのがきっかけでした。それから月日が流れて2度目に出会ったのは、大学4年の頃だったでしょうか、ベルリンに長期滞在していた友人が帰国して開いた報告会にて、彼が滞在中に観て印象に残った映像として紹介してくれた時でした。そして3度目がこの留学期間中、授業でイギリス人の先生が紹介してくれた時でした。コミュニティデザインの講義の中で、地域と向き合う際は時に個人レベルまで近づいて考え、時にエリアや市や国レベルまで引いて考えてみることが大切だという文脈の中で紹介されたものでした。こうして何度も私の前に現れたこの作品は、やっぱり不思議な魅力を持っていて、時々ふと観たくなるお気に入りの作品です。
留学から帰ってきて周りから言われたことのひとつが「落ち着いたね」。前のめりになりがちだった以前に比べて、すこしは冷静に物事を引いてみることが出来るようになったのかもしれません。とは言え、ただの冷めた人になりたい訳ではないので、ぐーーっと近寄ってみる度胸とエネルギーも持ち合わせていたい。この映像のように「寄ったり引いたりしてみるということ」。それは「様々な角度からみること」ともひと味ちがう。今後も大切にしていきたいキーワード。
そういえば最近、景色をちゃんとみれるようになったなあって思います。変な表現だけど、最近は景色を見るのが楽しくて、そこから色んなことを吸収出来るようになりました。これも「寄ったり引いたりしてみるということ」の一端かも。
さてここまで書いていくと、じゃあ別にフィンランドじゃなくても良かったのでは?という疑問にぶつかります。ということで最後にフィンランドという国だから良かったな、という話を少し。
(12月頭、本格的に降り始めた雪に興奮するわたし。実は精神的に一番つらかった時期。)
フィンランドという寒くて暗い国は、ありあまる時間の中でゆっくり自分と向き合うにはもってこいの国でした。目先のTo Doリストに追われながら、これでもかとスケジュール帳を予定でいっぱいに埋める日本での生活に慣れていた私は、目の前に横たわる自分だけの時間をどうやって組み立てればいいかまるで分からず、最初はひどく混乱しました。それでも家族や大切な人との時間を大切にするフィンランド人たちの生活スタイルに合わせるうちに、見えてくるものがたくさんありました。これは単なる後付けにしか聞こえないかもしれないけど、上に書いたような気づきも、こうして自分の時間を過ごすことを覚えたからこそ得られたものだと思っています。遠く離れた日本に想いをはせながら、日本の良い所にもたくさん気づけたし、自分の中にもちゃんと愛国心が備わっていることに気付いてちょっと安心したりもしました。自分がどれだけ家族に支えられ、それがどれだけ恵まれていて愛のあることなのかも知ることが出来ました。
そしてフィンランド人にみる、自然と共に生きることの尊さ。それは、長い冬を越えてやってくる春の素晴らしさ。新芽が一気に膨らみはじめた時のあの喜びと感動は忘れられません。
(5月。道端で無心でシャッターを切っていた私はきっと不審者だったと思う。)
帰国して3ヶ月。何故か遠方に出向く機会が多くドタバタが続き、忙しいマンと化してしまいそうですが、せっかく覚えた自分の時間の使い方を忘れないようにしたい。「時間が無いから」を理由にしないこと。ちゃんと自分で組み立てていけるようにしたいものです。
いやはや本当に長くなりましたが、留学総括、ひとまずこれで終わりにします。お付き合いありがとうございました。うまくまとまっているのかな・・発散したまま終わってしまっている気もしますが。実はまだここには書ききれなかった話もいくつか残っているので、またの機会に番外編とでも称して投稿したいと思います。
台湾滞在も後半戦に突入し、週末には日本に帰国予定。すっかり寒くなってるんだろうな〜。私の大好きな季節がやってきます。